頬に触れられた瞬間から、動けなくなった。
あたしの足は、地面に繋ぎ止められたように張り付いたままで。
司の瞳に映る自分に気が付いた瞬間、我に返ったあたしの言葉はキスで簡単に塞がれてしまった。
「・・・んっ」
少しずつ深くなるキスに、あたしの心臓は爆発寸前で。
相手に聞こえるんじゃないかと思うくらい、うるさく音を立てている。
「もう限界」と思った頃、彼は唇を離し、真っ赤になっているあたしを見て不敵に笑う。
「・・・もっと欲しいって顔してるぜ。」
「・・・してない。」
「素直じゃねーんだから」と、彼はその大きな手であたしをひょいと抱え上げると、寝室に向かっていった。
ベッドに横たえられたあたしはどうすることもできずに、彼が触れたところからまた動けなくなっていく。
余裕なんて、彼に見つめられた瞬間からとっくに消えている。
恥ずかしさで瞳を閉じると、司が「俺を見ろ」と言う。あたしの瞳が彼を映していないと不安になるらしい。
そんな彼が幼い子供のようで愛しくなって、あたしは司の頭をかき抱いた。
このまま時間が止まっていしまえばいいと、何度思ったことだろう。
やがてあたしは、与えられた彼の熱でとろとろに溶け始めた。
せめて想いの欠片を残そうと、快楽に流れ始めた思考の中で必死に彼にしがみつき、声にならない声で彼の名前をつぶやく。
そんなあたしを見て満足そうにまた笑う司に、あたしは悔しさとどうにもならない愛しさを感じて、
突き上げられるような、でも幸せな感覚の中で彼の背中に独占欲の印を残した。
・・・こんなはずじゃないのに、いつも彼の仕掛けた罠にはまってしまう。
隣で眠る、悪戯が成功した時のような満ち足りた表情の彼を、あたしは複雑な思いでじっと見つめた。
子供のように純粋でストレートな彼の愛し方を、あたしはわかっていながら嬉しいのだ。
女になった自分が、何を求めているのかも―――。
そしてあたしは、今日もまた彼に溺れる。