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甘い罠
〜side A〜








 






頬に触れられた瞬間から、動けなくなった。




あたしの足は、地面に繋ぎ止められたように張り付いたままで。
司の瞳に映る自分に気が付いた瞬間、我に返ったあたしの言葉はキスで簡単に塞がれてしまった。

 

「・・・んっ」

 

少しずつ深くなるキスに、あたしの心臓は爆発寸前で。
相手に聞こえるんじゃないかと思うくらい、うるさく音を立てている。

「もう限界」と思った頃、彼は唇を離し、真っ赤になっているあたしを見て不敵に笑う。



「・・・もっと欲しいって顔してるぜ。」

「・・・してない。」

 

 

 

「素直じゃねーんだから」と、彼はその大きな手であたしをひょいと抱え上げると、寝室に向かっていった。

 

 

 



ベッドに横たえられたあたしはどうすることもできずに、彼が触れたところからまた動けなくなっていく。


余裕なんて、彼に見つめられた瞬間からとっくに消えている。


恥ずかしさで瞳を閉じると、司が「俺を見ろ」と言う。あたしの瞳が彼を映していないと不安になるらしい。
そんな彼が幼い子供のようで愛しくなって、あたしは司の頭をかき抱いた。



このまま時間が止まっていしまえばいいと、何度思ったことだろう。

 


やがてあたしは、与えられた彼の熱でとろとろに溶け始めた。
せめて想いの欠片を残そうと、快楽に流れ始めた思考の中で必死に彼にしがみつき、声にならない声で彼の名前をつぶやく。

そんなあたしを見て満足そうにまた笑う司に、あたしは悔しさとどうにもならない愛しさを感じて、
突き上げられるような、でも幸せな感覚の中で彼の背中に独占欲の印を残した。


 

 

 



・・・こんなはずじゃないのに、いつも彼の仕掛けた罠にはまってしまう。
隣で眠る、悪戯が成功した時のような満ち足りた表情の彼を、あたしは複雑な思いでじっと見つめた。



子供のように純粋でストレートな彼の愛し方を、あたしはわかっていながら嬉しいのだ。

女になった自分が、何を求めているのかも―――。


 

 

そしてあたしは、今日もまた彼に溺れる。









 

fin.








 


タイトル通りのSSに仕上がった・・・・かな?久しぶりに書いた司×つくしのカップルSSです。
「強引」は司のためにあるような言葉だと思います。ちなみに、類バージョンのお話はいちさんに献上しました。
※こちらでも公開します。⇒『甘い罠〜SideB〜


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