>>>



 






―――彼女の瞳に映る自分の姿を見た瞬間から、彼女が何を欲しがっているのかわかってしまった。




 

 




甘い罠
〜side B〜

 

 

 

 

 

 

真っ直ぐすぎて、手に取るようにわかってしまう。
彼女が何を考えているのかも、誰を想っているのかも。


逃げられるわけがないことをわかっていながら、少し怯えた瞳をして俺を見ている彼女に一歩、また一歩と近づく。

彼女より彼女のことをよく知っている、俺から逃げる術は彼女にはない。



腕を伸ばして、彼女の頬に触れる。
秋の風で冷たくなった頬は、さっきより心なしか少し赤くなっている。

触れられて、何を言っていいのかわからないって顔をしている彼女は、そっと俺の手に触れた。




「花沢類の手って、冷たいね。・・・知ってる?手の冷たい人は心が温かいんだって。」

 

にこっと笑う牧野がかわいくて、思わずそのまま引き寄せてその頬にキスをした。

 

「! は、花沢類!?」

 

びっくりして俺の手を離して、キスされた頬を押さえながら見る見る真っ赤になった彼女。
その態度がますます男を煽っているんだってことを、彼女はわかっていない。


俺は次の言葉を聞く前に、彼女の口唇をキスで塞いでしまった。

 

―――つかまえた。

 

 

少しずつ深くなるキス。
触れた口
唇の間から漏れる吐息まで、彼女は俺のものだ。

最初は俺の胸を押し返すように
当てられていた手がやがて力を失い、俺の服を頼りなく必死で掴んでいる。
そんな彼女の腕を自分の背中に回し、彼女をきつく抱きしめた。


思った以上に細い彼女の体。どこにあのパワーが隠れているんだろう?

 

 

 

キスからしばらく俺の腕の中で動かなかった牧野が、小さな声でポツンと言った。


「・・・花沢類は、ずるい。」

「・・・。」

「あたし、ずっと隠すつもりだったのに。」

「・・・牧野はわかりやすいから。」

 

くすっと笑ってそう言う俺の胸を、「もう!」と軽く叩くと、牧野は俺の腕をすり抜けて照れたように2、3歩離れ、
不安な表情で尋ねる


「・・・あたし結構、嫉妬深いよ。ボンビーだし。」

「・・・知ってる。・・・俺も独占欲、結構強いし。」

「・・・変なことしたら、花沢類でも殴るかもよ?」

「・・・俺はそんなことしないよ。」

「・・・本当にあたしでいいの?」

「しつこい。」

 

そう言って、人差し指で彼女の額をピンと弾く。
額を押さえながら赤い顔で嬉しそうに笑う彼女に、俺はまた独占欲を
刺激された。

 

強引なやり方で彼女をずっと困らせてきた司より、ひょっとしたら性質悪いかも・・・。
そんな俺に気付かずに笑いかけている彼女に、少しだけ同情してしまった。


 

―――今度はどうやって彼女を困らせてみようか。


 




こんなことを考える俺は、すでに彼女の仕掛けた罠に落ちているのかもしれない。











 

fin.








こっちはどうでしょう?タイトル通りのSSに仕上がった・・・・かな?久しぶりに書いた類×つくしのカップルSSです。類が意地悪です(きっぱり)。
いや、類ってひょっとしたら腹黒なんじゃないのと思う時があるんですが(結構おいしいとこ取りだし)。でも好きなキャラです。
花男の人気は、6割くらい彼で占められていると言っても過言ではないでしょう(多分)。本誌でも、つくしに対して強引な類が見たかったなと思う今日この頃。
(2004/10/04)