キス 〜あたしたちの場合〜
喧嘩をしては結局仲直り。もれなくキスのおまけつき。
さっきまでの威勢の良さはどこへやら。あたしは結局、キスの威力に負けてしまう。
ついばむような軽いキスから、息もつけないほどの深いキスへ。
体を駆け巡る熱と、そしてそれを知らず知らずのうちに欲しがるあたし自身に、彼はどう思っているのだろう?
キスのあと、目を開けるのがいつも恐い。 抱き締められたまま、俯いて広い胸に頭を預ける。
照れ臭いのを誤魔化すように。
『もっと』とキスを求める自分をおさえるために。
「・・・こっち見ろよ。」
頭上から聞こえる低い声に、あたしは目を閉じたまま首を振って答える。
「・・・じゃ・・・」
いきなりそのまま抱きかかえられて驚いたあたしを、彼はそっとベットに横たえた。
「ちょっと・・・」
何か言いかけたあたしの唇は、彼に塞がれて言葉を失う。
髪に、額に、瞼に、頬に、そしてまたあたしの理性を奪い去るほどの深い深いキスに、あたしの思考はとうとうストップした。
―――ただ今は、ずっとこうしていたい。
求め合うように、奪い合うように、彼からあたしへ。あたしから彼へ。
体中に降り注ぐたくさんのキスの雨に、そして独占欲の印に、あたしは耐えられず甘い声をあげ始める。
名前を呼ばれるたび、生きている実感が湧く。
あたしは、彼のそばにいるんだと―――。
与えられる痛みと不安、そしてやがて訪れる耐え難い快感に、あたしは彼に必死にしがみついた。
―――そして今日もあたし達は喧嘩をする。仲直りのキスもいつものように。
それはいつも些細なことから始まるけれど、
その後の展開を、あたしは密かに楽しみにしているなんて―――――
誰にも言えない、あたしだけの秘密。
fin.
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