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<卒業>

 

 

 

・・・・・・いろんなことあったけど、あたしこの学園に来てよかったと思う。

まあ…8割方ろくな事なかったけれど…あたし、みんなと出会えてよかった。

 


今日はF4の卒業式。4人とも大学部に進学するから会えなくなるってことはないけれど、今までの様にきっと顔を合わすことなんてないんだろうな…。

あたしにとって何かとトラブルの種になってた人達だから嬉しい気持ちもあるけれど…ホントは何だか寂しいって思う。


…もう非常階段で花沢類とおしゃべりすることもなくなるんだ……

 

 


ここは英徳学園の非常階段。卒業式はもう終わったけどあたしは何となくF4に会いたくなくて、いつものように一人でボーっとしていた。

空はどこまでも青く広がっていて…今日は新しい門出を祝うにはぴったりの日だ。

 

 

 

今までF4と出会ってから起きたいろんなことを思い出していると、突然、非常階段のドアが開いた。
ここに来るはずのない人が目の前に立っている。


「牧野」

「…花沢類…びっくりした…なんでこんな所に…今日卒業式なのに」

「…それはこっちのセリフ。何か疲れちゃって…人ごみって嫌いなんだよね。そうそう、司が探してたよ」

「…そう…」

あたしは小さな声で返事すると、また空を見上げた。

花沢類も黙っていつもの場所にゆっくり腰を下ろす。

 

 

…いつもの優しい二人の時間だ…でもそれも今日で終わりかぁ…

 

 

「行かないの?」

「…うん。何かね、まだ会いたくないんだ」

あたしは本音をもらした。

「…どうして?」

 

 

彼は出会った頃と少しも変わらない、茶色いビー玉みたいなきれいな目を丸くして不思議そうにあたしを見る。

 

「何かね…今までF4とはいろんなことがありすぎて…隣の校舎になるだけだから、もう会えなくなるってことはないんだけれど」

「…ちょっと寂しいなあ…って?いろいろあったもんね。特に司とは」

花沢類がいたずらっぽい目をしてにやりと笑う。あたしは顔が赤くなるのを感じた。

「花沢類、意地悪だ。…あんた達と出会ってからあたしは苦労の連続よ。あーっ、卒業してくれてせいせいするっ!」

 

 

 

あたしはスカートのほこりを払うと勢いよく立ち上がった。スタスタとドアに向かう途中でふと足を止めて彼の方を見る。

 

 

「…花沢類ともね、いろいろあったよ。あたし本当に感謝してるよ。いつも助けてくれてありがとう。何度言っても言い足りないよ」

あたしの言葉に彼はにこりと笑った。

「うん、知ってる」

「もうここで会えないけど…これからもよろしくね」

「うん、司と仲良くね」

「もう!あたし真面目に言ってんのに」

 

あたしは少し怒ったように言うと、花沢類はそんなあたしの顔を見て面白そうに笑う。

 

「親友の彼女ならずっと友達だよ。前にも言ったじゃん。…ほら、早く行かないと司が切れるよ」

 

「うん」

 

 

…本当はもうちょっと話したかったんだけどな…

 

あたしは花沢類に聞こえないように小さな声でつぶやくと、笑って彼に言った。

 

 

「…ね、花沢類。遅くなったけど…」

「ん?」

「卒業、おめでと。」

 

 

春の匂いを乗せた風が優しく二人の間を通り過ぎた。

 

 

                                                      fin.