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Romantic

 

 

 

会えない時間が増えていくほど、あいつを好きだって気持ちが比例していく。
そんなあたしの気持ちとは裏腹に、言葉には言い表せない不安が反比例に膨らんでいって。

滋さんや桜子は『それは贅沢な悩みね』なんて笑って言う。
もともと生きる世界が違うんだから・・・それはあたしだってわかってはいるんだけど、
あたしの心は納得してくれない。



あいつに会いたい。

会っていろんな話をして、抱き締めて欲しい。

昔はうんざりしてた喧嘩だって懐かしい。

 

ふっ、と溜息をついて夜空を見上げる。
空にはぽっかりときれいな月が浮かんでいて、時差はあるけれど
あいつもきっと同じ月を見るんだろうなぁと思うと切なくなって、丸いお月様が
少しにじんで見えた。



・・・お互い忙しくなって、なかなか連絡を取れなくなってからやっと気付いた。
あたしはいつだってあいつを待つばかりで。
彼とのロマンチックな展開を夢見ている。


・・・あたしってバカだ。そんなこと、いつも都合よく起きるはずないのに。
欲しいものは、自分から動いて手にいれなくちゃ。


あたしが欲しいものは、たった一つだけだから。

 

そんな時、花沢類から電話が入った。

 

 

*******

 

 


・・・目が回るほど、忙しい。
『たった4年間だ』って、自分に言い聞かせてきたつもりだけど、
いい加減、息苦しくなってきた。


自由勝手にやっていた、ガキだったあの頃に戻りたい。
でも、それはババァとの約束を破ることになってしまう。
俺の周りには、いつもババァの秘書が目を光らせて俺を見張っているのだ。

あいつに会いてぇ。

会って抱き締めたい。

喧嘩だって、あいつがそばにいるならいくらだって・・・。

 

最上階の社長室からNYの景色を見ると、大きな月が目に入った。
・・・あいつも同じ月を見ているのだろうか。


NYに来てから、何度あいつの顔を思い出しただろう?
落ち込んだ時に思い出すのは、いつもあいつの怒った顔。
成功した時に思い出すのは、あいつの笑顔。

言い寄る女だってこっちに来てからもたくさんいたのに、何で俺はあいつしかだめなんだろう?

すでに出ている答えをもう一度確かめるように、写真の中のあいつを指でなぞる。
NYに来てもう2年が経つ。
あいつは高校を卒業して、英徳大学の奨学生としてがんばっているらしい。

約束の時まで、あと2年。
今まであっという間だったような気がするが、2年はやはり長い。


・・・久しぶりに電話をかけてみようか。
でも、あいつの声を聞いてしまったら、俺はきっと我慢が出来なくなってしまうだろう。
明日からの仕事を全部放棄してでも、日本に帰ろうとするかもしれない。


それでも・・・

デスクの上に置かれた携帯電話を持とうとしたその時、類からの着信が入った。

 

『・・・久しぶりだね、司。元気?』

「ああ、お前こそ仕事頑張ってるんだって?よく寝ずにやれてるようだな。」

『・・・司こそ、日本にいた頃と全く違うって、椿姉ちゃんがびっくりしてるって聞いたけど。
 もうちょっと素直になるのが早かったらねぇって、嘆いてたよ。』

「・・・どういう意味だよ。」

電話の向こうで、抑えたように聞こえる笑い声に俺はちょっとイライラしてきた。

「で、何だよ?用件は。何も無いなら切るぞ。俺は忙しいんだ。」

『そうそう、司の声も聞きたかったのもあるんだけど、実は近々親父の代わりに
 NYに行くことになってさ。時間空けるから、久しぶりに会わないかと思って。』

「いつ?」

『3日後。』

「秘書に確認させるけど、多分夜なら大丈夫だと思う。」

『じゃ、着いたら連絡するから。』

「おう。」

『・・・あ、それと、司。婚約者も連れて行くから。』

「こんやくしゃぁ?お前が!?」

『ま、楽しみにしといて。』

「え?おいっ!」

電話の向こうでクスクスと聞こえる笑い声を残して、電話は切れた。

 

 

********

 

 

『アメリカ、行かない?司に会いに。』

突然の花沢類の誘いにびっくりしたけど、二つ返事でOKした。
もちろん、渡航費は後で返すことを約束して。

ただ道明寺家の人達にばれるとやっかいなので、
あたしは表向き、花沢類の婚約者として変装して行くことにした。

 

待ち合わせの場所は、予想していた通りメイプルホテル。
2年ぶりに会えるということで、あたしはかなり緊張している。

良家のお嬢様よろしくな格好をしたあたしは、ばれないように帽子を目深にかぶって
顔の表情が見えないようにして、花沢類の腕を組んで歩く。
多分、あたし達は誰から見ても仲の良いカップルだろう。

丁寧にお辞儀をされて通された部屋で道明寺が来るのを待った。
いつ入ってくるかわからない人達に備えて、帽子をまたかぶりなおす。

 

ああ、もうすぐあいつに会える・・・!

 

「・・・牧野、緊張してる?」

「え?」

「だって、ずっと顔、ひきつってるよ?」

そう言っておかしそうに花沢類はクスクス笑った。

「・・・そりゃ、2年ぶりだもん。あいつに会うの。花沢類は仕事で時々会ってるだろうけど。
 ・・・ありがとね。花沢類。声かけてくれて。」

「どういたしまして。」


 

「花沢様、道明寺様が到着されました。」

ノックされた後、開かれたドアから道明寺が入ってきた。


2年間は、彼を大人にさせるのに十分な時間らしい。
ビシッとスーツを着て、颯爽と歩いてくる彼は、誰から見ても道明寺財閥の立派な跡取に見えた。
あたしは、花沢類の背中に隠れるように、後に立った。

道明寺は花沢類を見ると、それまでの表情が柔かくなって笑顔になった。


「・・・久しぶりだな。」

「そっちこそ。久しぶり。時間くれてありがとう。」

「いや、そろそろ、息抜きしてぇなと思ってた頃だし。
 ・・・そういえば婚約者、連れてきてるんだって?紹介・・・」

そう言って後ろにいるあたしに目をやると、まだ帽子をかぶっているあたしを指差して、
道明寺は絶句していた。


「・・・まさか、類・・・。」

「・・・そのまさかだけど、内緒で連れてきたんだ。それにしてもよくわかったね。さすが、司。」


「・・・道明寺、久しぶり・・・。」

恐る恐る帽子を取ったあたしを見ると、なぜか道明寺はすでに怒り出していて、
その瞬間、花沢類の襟元をつかんでいた。

「どういうことか、説明しろっ!」

・・・ああ、やっぱり勘違いしてる・・・。
夢見ていたのは、涙涙のというわけではないけど、感動の再会。
でも、何であたし達って、いつもこうなんだろう?

あたしは二人の間に割って入って、必死で説明した。

「婚約者だって嘘ついて、あたしが連れてきてもらったのっ!
 あんたの秘書はあたしのこと知ってるでしょ?だから・・・」

「・・・・・・」

「・・・人の話は最後まで聞いて欲しいよね・・・。血の気の多さは全く変わってないんだから。」

「・・・うるせぇ。紛らわしいことしたお前が悪い。・・・でも悪かったな。」

ふて腐れたように、ぼそりというあいつの背中をぽんと叩いて、花沢類は笑って言った。


「・・・実は、俺、日本を出てからあんまり寝てないんだよね。
 久しぶりに司に会えるって、緊張した誰かさんが飛行機の中でしゃべりまくるお陰で、
 十分に寝てないんだ。俺、向こうの部屋で寝てくるから、ゆっくりしててよ。」

「え?え?ちょっと・・・!」


そう言って、唖然とするあたしの耳元ですれ違いざまぼそっとささやくと、微笑みを残して
向こうの部屋へ消えていった。


残されたのは、あたしと道明寺の二人っきり。
待ってよ。心の準備が・・・。


「・・・・・・」

「・・・類は、何て?」

「〜〜〜っ、・・・『素直になれ』だって・・・。」


あたしは答える代わりに、赤くなった顔を見られまい、と道明寺に抱きついた。
最初は戸惑っていた彼の腕が、小さな溜息が聞こえた後、何も言わずあたしを包み込む。

「・・・元気、だったかよ?悪かったな、勘違いしてよ・・・。
 本当に類の婚約者になったのかと思って、心臓止まるかと思った・・・」

「バカ・・・」


あたしの頭をなでる手が優しくて、あたしの涙腺は決壊しそうで。
誤魔化すように、伝えようと決めてきたことを口にした。


「・・・あと2年、待てそうにないから・・・ううん、待つためにあんたから奪いに来たものがあるの。」

「何?」

「それは・・・」

あたしは手を伸ばして、あいつの頬に手をやる。
2年前とは比べもつかない、大人の男になった彼の顔。
あたしは、ドキドキする心臓を抑えるように、唖然とする彼にそっとキスをした。

「・・・あんたの気持ち。2年後会った時にまた奪いに来るから。」

そう言ってにっこり笑ってあたしは俯いた。涙を見られないように。
目を丸くしてあたしを見つめているだろう、彼の視線を感じる。



「・・・じゃ、俺も貰うよ。」


「何を」と言いかけたあたしの言葉は、キスに飲み込まれた。

息も出来ないほどの深いキスに、あたしの心臓は爆発寸前だった。


欲しいものは、待っていても手に入らない。
『奪う』なんて、嘘。
偉そうに言っても、あたしはただ、道明寺に会いたかっただけ。




「・・・ずっと会いたかった・・・・・・」




それなのに。

力一杯抱き締められてこんなキスをされたら、あたしは彼の想いに溺れてしまう。
あいつのことがとても好きなんだと、その想いの深さにまた泣きたくなる。

キスだけで、あたしの全てが奪われそうで。


・・・流されないようにするだけで精一杯だった。





カクンと力が抜けてしまったあたしは、ずるずるとカーペットの上にへたり込んでしまった。
あたしは涙目になって、真っ赤になったままあいつを見る。

「・・・ごちそうさま。」

そう言って、あたしの手を取ったまま不敵に笑う彼の笑顔に、
あたしは残された1%の『あたし』も奪い取られてしまったように感じた。
ミイラ取りがミイラになった気分・・・。


「・・・さ、類を起こしに行こうぜ。そろそろ俺行かなきゃなんねーし。
 これ以上お前と一緒にいると、俺の理性もたねぇし。」

「・・・すけべ。」


手を伸ばされ立ち上がろうとしたけれど、あたしは足に力が入らなくて立てなかった。
途端に道明寺は大笑いした。


「〜〜〜笑わないでよっ!責任取ってよねっ!あんたのせいなんだからっ。」

「ああ、取ってやるよ。・・・今すぐには無理だけど、2年後にな。」


あたしは真っ赤になって、ソファーに置いてあったクッションをあいつに投げつけて言った。


「・・・2年後、奪い返しに来るからねっ!」

「望むところだ。」

そう言って、楽しそうに笑う彼に支えられながらソファーに座らされたあたしは、
花沢類を起こしに行く彼の後ろ姿を見送りながら、緊張が解けたのかそのまま眠りこんでしまった。


寝起きの悪い花沢類をやっと起こして戻って来た彼が、
ソファーで眠るあたしを見て呆れていたことを聞いたのは、帰りの飛行機の中だった。

『牧野らしい』と、その状況を思い出して花沢類の笑いの発作はしばらく止まらなかったけど。


・・・少々色気がなくったっていい。これがあたし達の恋の形。

女の子なら誰もが夢見る『ロマンチック』な展開になるには、
・・・あたしが大人になるためには、もう少し時間がかかる、と思う。

 

 

                                   fin 



 

 

 

 

アンケートで1位だったSSタイトルを10万打記念としてUPしました。やっぱりつか&つくの人気は健在です。
10万打、ありがとうございました!(あっという間に超えてますが) 一番先にゆきさんに捧げます。(2005/08/16)