パレード
〜あたし達の幸せのカタチ


 

 

 

 

 


急な話だった。・・・というか、アイツとの話の展開はいつも先が読めない。

あたし、牧野つくしは、6月になんと・・・『ジューン・ブライド』を迎えることになった。

 

道明寺が帰って来てからまだ3か月しか経ってないのに・・・本当にお金持ちの考えることはわからない。

ぼっちゃんのワガママというか、急に道明寺が言い出したことなのだ。

大財閥の御曹司の結婚式というだけでもその重大さを考えると不安になるのに、
よりによって、そんなに早くに式を挙げるなんて、もっと段取りとかあるんじゃないの・・・と。

あたしだって素敵な結婚を夢見ていた乙女なのだ。心構えだって時間がいると思ってたのに。

アイツが絡むことであたしの世界の中での普通が普通でなくなっていくのは、いい加減慣れてきたけど・・・。

 

 

事の起こりは、あたし達がやっと一つに結ばれた(なんて言うのも恥ずかしいけど)ベットの中だった。

 

 

 

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死ぬほど恥ずかしくて、あたしはアイツの顔を見れなくてシーツで顔を隠していた。
あいつはそんなあたしを後ろから優しく抱き締めてくれて・・・・

 

ってそんな話は置いといて、あいつは唐突に言い出したのだ。

 

 

『後でも今でも一緒だ。さっさと式挙げようぜ。』

『・・・は?何の話?』

『結婚式。』

『・・・誰の。』

『・・・お前バカか。俺達のに決まってんだろ?他に誰がいるんだよ?』

 

バカという言葉に反応してしまい、あたしは思わず振り返った。

『だって、アンタついこの間帰ってきたばかりじゃない?日本の仕事だって大変なんでしょ?
あたしだって心の準備が・・・』

『そのため4年間だんたんじゃねーの?・・・それとも俺、4年前に比べていい男になってない?』

 

甘えるような視線でじっと見つめられて、あたしは思わず『うっ』とつまってしまい何も言い返すことができなかった。
タレント顔負けの容姿に加えて子供っぽいところも魅力的だった4年前の彼と比べて、
今の彼はずっと大人びていて、どこか自信に満ち溢れていて、確かに誰が見ても『大人の男』で魅力的になっているのだ。

 

『・・・お前、言ったよな。俺が『いい男になって帰ってきたら、あたしがあんたを幸せにしてあげてもいいよ!』って。』

『・・・そそそ、そんなこと言ったっけ?』

 

そういうことだけはしっかり覚えているなんて、何でこういう時だけ記憶力いいのよ?
誤魔化すように赤くなって笑うあたしの頬にキスをすると、道明寺はあたしの首筋に顔を埋めた。

『・・・・!ちょっと・・・!』

『・・・それとも今こうしてお前の隣にいるのは、類の方がよかったのか・・・?』

 

小さな子供のようにすねた口調でそう言う彼に、あたしは何だか愛しさがこみ上げてきてその大きな体に腕を回した。

『・・・そんなこと思ってないよ。ただ・・・』

『ただ?』

『あんたがあたしの隣にこうして約束どおり戻ってきてくれているのが、何だかまだ夢見たいで・・・・
あたしの中ではそんなすぐに”結婚”は考えられないよ。』

『・・・じゃ、俺のこと、好きか?』

 

そう言ってまた彼はあたしをじっと見つめた。
その瞳に吸い込まれるようになり、次の瞬間あたしは首を縦に振っていた。

ニヤリと笑ったあいつの顔を見てあたしはやっとハッと我に返る

 

――時、すでに遅し。

 

『じゃ、決まりだな。類みたいな虫がつかねぇうちに俺はお前と結婚してぇんだ。
表向き大披露宴はお袋との約束上しなきゃいけないし。それは準備も時間がかかりそうだから・・・。
とりあえず、先にダチだけ呼んでやらねぇ?』

 

 

 

 

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・・・ということで、プライベートだけでひっそりと行われるパーティーが行われることになった。
出席者は、あたしの家族と道明寺の家族、F3と静さん。優紀と滋さんと桜子、和也君。

 

あたしの家族の舞い上がりぶりときたら、それはもう恥ずかしくて言えないほどだった。
F3と優紀達は、自分のことのように喜んでくれた(特にF3は猛獣のお世話から解放されるって)。

 

椿お姉さんは、『妹ができて嬉しい』と涙を流しながら、それはそれは強くあたしを抱き締めた。
あまりの強さにあたしは思わず気が遠くなった(道明寺が止めてくれたけど)。


そしてタマさん。あたしはこの人に随分心配をかけてしまった。
本当のおばあちゃんみたいにあたしを支えてくれたタマさんも、「ぼっちゃんをよろしく」とあたしの前で2度目の涙を見せて喜んでくれた。
『あんた達の子供の顔を見るまで死ねないねぇ』の一言も一緒に添えて。

 

道明寺のお母さんとも会った。
4年の間にいろんなことがあったのだろう。息子を見つめる眼差しは随分優しく感じられた。

「・・・道明寺の長男の嫁として、やるべきことはしっかりやってもらいますよ。
それまであなたのことを認めるつもりはありません。・・・ま、あなた位の根性の持ち主なら大丈夫でしょう。」


そう言って不敵に笑った楓さんに、あたしはこの人に対して完全には消え去っていなかった黒い感情が溶けてなくなる思いがした。

「はい!・・・負けませんから!」

 





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当日は、あたし達を祝福するかのようにいいお天気だった。

 

お姉さんが選んでくれたウエディングドレスを着て、バージンロードを歩く。
目の前には素敵な旦那様。近づいて隣に立った時、小声で彼を呼ぶ。



「道明寺。」

「・・・・おまえねぇ。そろそろ名前で呼べよ。お前だって”道明寺”になるんだから。」

「いいじゃない。なんか、照れくさくって・・・・。今更。
だいたい、あんただって、あたしのこと名前でほとんど呼ばないじゃない。”お前”ばっかり。」

「・・・そ、そんなことねーよ。じゃ、呼んでやるよ。」

 

神父様を無視して、ぼそぼそと小声で話し続けているあたし達の様子に気付いたF3達が、呆れ顔でこちらを見ている。

 

「つくし。俺がお前を幸せにしてやるよ。」

 

突然、大きく響き渡った声に周りはびっくりして祭壇の2人に注目が集まる。

顔を真っ赤にさせているアイツにあたしは驚きつつもにっこり笑うと、ブーケを持ったまま新郎の首に腕を回した。

 

「望むところよ。司。 あたしもあんたを幸せにしてあげる!」

 


宣戦布告を誓いのキスに乗せてあいつに送る。

 

 

これがあたし達の幸せの形。

どんな嵐が来ても、きっと2人なら乗り越えられるって信じてる。

 

 

 

周りの祝福の声に包まれながら、あたし達は永遠の愛を誓った。

 

 




 

fin.





 



『FF*Festival2』リレー小説「パレード」2人のその後です。隠し・・・ということでUPしました。
う、、、私の力量ではこれが精一杯・・・遅くなってごめんなさい。(涙)
見つけていただいた皆さん、読んで下さってありがとうございました!(2005/04/19)