憧れていたのは、お互いを思いあう静かで穏やかな恋。
現実は、泣いたり笑ったり、忙しくて心が休まる時なんてなかった。
でもあたしが選んだのは、息つく暇もないほど激しい恋。
離れていた4年間、ずっとこの思いが風化することなんてなかった。
未来へ
〜After 4 years〜
今までずっと意地を張っていたのに、急に素直になんてなれっこない。
でも、いつからだろう。そんなことが馬鹿らしいと思うようになったのは。
いつだって真っ直ぐにあたしを見て、正直な気持ちをぶつけてくる道明寺に、感化されたのかもしれない。
少しでもそばにいたくて。
隣にいるのが当たり前で。
それは実はすごく贅沢なことだったんだと、彼がいなくなってからわかった。
――――あれから4年、あたしの目の前に以前より大人びた彼が立っている。
約束通り、迎えに来てくれた。
言いたい事はたくさんあるけれど、上手く言葉に出来なくて。
走り出した足が地に着いていないような気がして。
「・・・おかえり!」
「・・・ただいま」
やっとそばに近付いた時には、あたしは道明寺に体ごと預けていた。
背中に回された腕があたしを軽々と支える。ほのかに香る煙草のにおい。
彼の成長にあたしは4年の月日の長さを感じた。
「髪・・・伸びたな。」
彼は、初めて会った時と同じくらい伸びたあたしの髪にキスをして、
もう一度強く抱き締めると名残惜しそうにあたしを解放した。
昔と同じ、真っ直ぐな瞳であたしを見つめる。
「会えたら、ずっと言おうと思っていたことがあるんだ。」
「・・・あたしも、ずっと言いたかったことあるの。」
「・・・何だよ。」
「・・・そっちこそ何よ。」
しばらくの沈黙。
あたしたちは同時にぷーっと吹き出すと、笑いあった。
「これじゃ、また喧嘩だな。」
久しぶりに笑う道明寺を見て、あたしは嬉しさで胸がいっぱいになる。
―――だめだ、泣くかも。
「・・・じゃ、道明寺からどうぞ」
「え?そっか・・・じゃ、俺から・・・」
コホンと咳をするようにすると、ジャケットのポケットから小さな箱を取り出し、
スムーズな動作であたしの右手を取り薬指にリングをはめた。
ぽかーんとするあたしに、道明寺は柄にもなく赤くなってぼそりと言った。
「・・・約束の印。本物はもう少し後になるけど。」
何を返せばいいのかわからなくて、でも、嬉しくて泣きそうな顔を見られたくなくて、あたしは彼に飛びついた。
あたしの背を優しく撫でる大きな手。ずっと欲しかったぬくもりがあたしのすぐそばにある。
4年前に我慢した涙が、喜びの涙と一緒にとめどなく流れ出る前に、
あたしは彼の耳元で、離れ離れになる前に言った言葉を囁く。
「・・・やってもらおうじゃん。」
あたしの言葉に道明寺は満足そうに微笑むと、そのままあたしに息も出来ない程の激しいキスの雨を降らせた。
頭の中でこれまでの思い出がフラッシュバックする。
いいことも悪いことも全部、あたし達は乗り越えてきた。
目の前には多分、新たな問題が山積みかもしれない。だけど、きっと何とかなるだろう。
4年前、彼に宣戦布告した通り、あたしの誓いの言葉は今もたった一つだけ。
―――あたしがあんたを幸せにしてあげる。
fin.
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