〜Before Christmas〜
「・・・え?」 「本当にごめん、牧野。この埋め合わせは必ずするから。」 牧野と言われる呆然としている少女の目の前には、申し訳なさそうに手を合わせて必死に誤っている男。 (・・・楽しみにしてたのに。) わかってはいたけど・・・と、牧野つくしは心底残念そうに、でも、学業と仕事で忙しい彼に負担をかけないように無理に笑顔を作ろうとした。 最初は得意のわがままで周りを振り回していた彼も、やっと一経営者としての自覚が出てきたのか、 父親の代理で、どうしても行かなければならない仕事が入ったらしい。 (・・・まあ、今に始まったことじゃないけどね・・・) つくしはふぅと小さな溜息を吐くと、笑顔を作って司に言った。 「今度、期待してるから。」 「・・・おまえ、笑顔が引きつってるぞ・・・。ほんとにごめんな。仕事、早く終わらせて迎えに来るから。」 「いーよ。気にしないで。ちょうどバイト先の店長にクリスマスの日入れないか聞かれてたし・・・。」 彼女らしい台詞に、司は苦笑しながら言った。 「彼氏としては、たまには『一緒にいてよ』とか、『寂しい』とかいう台詞、言って欲しいけど?」 悪気はないのだけれど、司の鈍感な一言につくしはむっとする。 「・・・誰のせいだと思ってんのよ?あーあ、花沢類とでもお茶しようかな。」 喧嘩腰の彼女の台詞に、司もむっとして言葉を返した。 「そんなことやってみろ!別れるからな! 随分大人になったなあ、と心の中で思ったつくしの右手が司の大きな手で包まれる。 つくしが驚きで目を開けると、薬指にはいかにも高価そうな指輪が輝いていた。 「・・・ちょっと早いか。でもいずれはそのつもりだから・・・・・・約束の印。 「・・・それを言うなら『日常茶飯事(さはんじ)』でしょ・・・バカ・・・・。」 つくしは溢れそうになる涙を見られまいと、司の胸に頭を預けた。
いつも彼はそうなのだ。 「・・・あたし、実はあんたにプレゼントまだ用意してないんだ。何か欲しいもの聞こうと思って。 「げ。食いもんは遠慮しとくわ。・・・・・ま、俺の欲しいものと言ったら、ひとつだろ?」 「え、何、何?」 司は顔を真っ赤にさせると、つくしに向かって悪態を吐いた。 「・・・わかんねぇ?言わせんなよ。この鈍感女。」 つくしは司の言った意味を理解したのか、ゆでだこのように真っ赤になった。 「・・・ホントにあんたって・・・バカ。」 向かい合って真っ赤になっている、(バ)カップル二人。
「ありがとね・・・・」
唇が離れた瞬間、俯いて小さな、小さな声でそう言うつくしが可愛くて、
クリスマスの前、束の間の幸せを掴み取った二人の未来が重なる日は、
fin. |
超久しぶりにUPしました。クリスマス編です。久しぶりの話がお約束ですみません(ToT: 続編ほんとに出なさそうですね。しょぼーん・・・でもファンサイトも昔に比べたらかなり出来ているようで、嬉しいです。(2004/12/16) |