振り回されているのは、誰?
騒動の始まりはいつも些細な一言から。 「・・・忘れてた。バイト続きでそれどころじゃなかったから。」 桜子は「信じられない」と首を振り、心底呆れたようにつくしを見た。 「・・・ホント、信じられない、先輩。一応、いくら生活に疲れた主婦みたいに見えたとしても、先輩だって花の高校生なんですよ? 「桜子ってやっぱり何気に意地悪よね・・・もう、わかってるわよ。」
この一大イベントで彼氏の気持ちをゲットするには・・・など、桜子は役に立つのか立たないのかわからない男心をくすぐるテクニック?
ひょんなことから(と言っても苦労の連続だったが)、大財閥の御曹司である道明寺司とつきあうことになったつくしは、
(桜子の言う通り、さすがに・・・これはやばいかもね・・・。)
つくしは少し溜息を吐くと、司の携帯に電話することにした。 「・・・もしもし」
(「・・・ちょっと声が聞きたくなっちゃって・・・」)
桜子が言う「可愛い女」なら、そんな風に言うかもしれない。
「別に。」 『・・・・・・・。』
『・・・まあいい。お前、これから暇か?』 「うん。今日はたまたまバイトないけど。」 『じゃ、6時に家に来い。じゃあな。』 「ちょ・・・」
*******
久しぶりの道明寺家は、相変わらず大きかった。 大きな白いソファーに腰掛けて書類らしきものを見ていた司は、つくしを見ると「よう」と手を振る。 「・・・あんたが何か読んでるなんて、珍しいね。何か変な感じ。」 「ああ、会社の書類だけど。こんなもんくらい当たり前だ。・・・それより、今日何の日か知ってるか。」
司はつくしの顔をじっと見つめると、意味ありげにニヤリと笑った。
「うん、まあ。」 「・・・で?」
まさか持ってきていないことはないだろうと、司は今にも手を差し出して、つくしのカバンを奪いそうな様子だ。
自分らしくない、大胆なことをしているとわかっていた。そして、上目遣いに彼を見つめる。
「・・・・!お前、楽しんでやってるだろ?」 司はばつが悪そうに真っ赤な顔のままで、クスクスと笑い続けるつくしを睨みつけた。 「・・・いいじゃない。たまには。こっちはいつもあんたに振り回されているんだ・・・し。わっ、ちょっと・・・!」 司は彼女の腕を取り強引に引き寄せると、細い腰に腕を回し、抱きしめるようにして彼女の耳元で囁く。
「・・・!!」
お決まりの言葉を耳元で囁かれ、今度はつくしが真っ赤になって固まってしまった。 「・・・と、とりあえず、チョコレート市販のだけど買ってきたし・・・一緒に食べない?」 彼の腕を解くようにして話題を変えようと、自分のカバンを引き寄せようとする彼女を、彼は自由を奪うように腕の中に再び閉じ込めた。
―――ああ、何でこの男は臆面もなくこんな台詞が言えるのだろう?
つくしはカバンに伸ばしかけた腕を諦めたように彼の首に回し、チョコよりも甘い時間に身を任せることになってしまった。
*******
「せっかくだし、チョコ一緒に食べない?」 シーツに包まりながら、つくしは持ってきた包みに手を伸ばした。 「・・・げ、俺、甘いもの苦手なんだけど。」 「大丈夫。そうだと思ってビターチョコ買ってきたし。それに・・・」 「それに?」
つくしはチョコを口に入れると、司にキスをした。 やわらかくとろとろと。それは彼女の気持ちまで一緒に。
やっと唇が離れると、彼は真っ赤な顔をして彼女に告げた。
「・・・チョコって美味いんだな。」
その後、甘いものが苦手だった司がチョコレートを好んで食べるようになった。
fin.
|
うわわ・・・書いているうちにテーマとあんまり関係ないことになってしまった気がします。まあ、いいか。遅くなりましたが、バレンタインSSです。 途中の司の台詞は、お好きな台詞を妄想してください(笑)。「好き」を告白しあっているって感じですかね。でも結局、私の中ではつくし最強(ただし天然)。 「バレンタイン+チョコ+カップル」とくれば、やはり「キス」でしょう。ありきたりのような気がしますが、そこはまあ、「花男だからOK」ということで(苦笑)。2005/02/17) |