この気持ちを何と呼べばいいのだろう? この俺様に啖呵を切った女が類と話をしているのを見ると、急にイライラしてきた。 俺には決して見せない笑顔を、類の前だけでは惜しげもなく見せるあいつ。
・・・英徳学園では泣く子も黙るこの俺に、どうしてあの女は怖がりもせず楯突いて来るのか。
後ろ盾があるわけでもない。 おまけにボンビーだし。
『だったらほっとけば』なんて総二郎達は言うけれど、このままじゃ俺のメンチョにかかわるんだよ。
・・・あ、メンツか。
コホン。それはさておき・・・だ。 俺のこのモヤモヤを解決するためにも、あの牧野つくしって奴に一度、後悔させてやらねぇと。 道明寺司をコケにしたことを思い知らせてやる。
ドアを開けると、少し湿った風が頬を撫でた。
どうにもできない苛立ちを認めたくなくて、思い切り暴れまくった後に残されたのは、
ふと移した視線の先にあるのは、多分、あの女が残した忘れ物。
―――牧野つくしはここに来る。
保証はないのに、なぜがそんな気がしてならなかった。
非常階段に向かって近づいてくる足音。
―――一番残酷な方法で、牧野を追い詰めてやる。
逃げたあいつを捕まえて、無理やりキスして服従させようと思った。
「・・・やめて、道明寺。」
俺の名前を呼んだ彼女の声にふと我に返ると、あの気の強い牧野が泣いていた。
心を支配する、このイライラした気持ちを何と呼ぶのかってことに。
彼女の涙を見た途端、心に巣食っていた黒い気持ちは萎んで消え、
「・・・もうしないから、泣くな・・・」
とにかく泣き止むまで、あいつの頭を小さい子供にするそれのようにずっと撫で続けた。 忘れ物を残したまま。
―――そしてやっぱり素直になれない俺は、このあとも牧野と喧嘩をする。 何とか彼女の気を引きたくて友人を巻き込んだとしても、俺はどうしても『牧野つくし』が欲しかった。
一番欲しくて、手に入れられないもの。
日に日に大きくなる、彼女を手に入れられない苛立ちと焦り。
『恋は盲目』?いいじゃねぇか。
・・・その思い込みが、実は随分回り道をさせていたのだと俺自身気付いたのは、
fin.
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懐かしい場面も入れつつ、司の視点で書いたSSでした。過去と現在と未来が混在してますが、 お分かり頂けたでしょうか?司が大人になった話とも言えるかな?(2004/04/25) |