うそつき



 

 

 

今日、一つ嘘をついた。

それは誰よりも好きな人を幸せにする嘘で、自分を不幸にする嘘。

 

諦めた、なんてウソ。

でも幸せになって欲しいのは本当。

 

お金持ちの一人娘でワガママばかり言って周りを困らせてきた私が、唯一ついた嘘。

・・・昔何かの本に書いてあった。

『人間は切望しているものほど、手に入りにくいものだ』って。本当にその通りだと思う。

 

たくさん泣いた。時々思い出すと、胸が痛む時だってある。

それでも好きな人には幸せになって欲しいなんて、自分にこんな気持ちがあるとは思わなかった。

 

 

―――『私は平気』なんて、口に出して言ってみたところで、全然平気じゃないくせに・・・・・・。

 

 

本気で人を好きになることがこんなに苦しいなんて、初めて気付いた。
ポッカリ胸に空いた穴を隠すように手を胸の上で組み、ベッドに寝転ぶ。

 

目を閉じて浮かぶのは、大好きな彼と、彼が好きな彼女。

 

 

もう少し出会うのが早かったら結末も違うものになっていたかもしれない、なんて考えてしまう。
でも、同じ年とは思えない苦労をしている彼女のことを、私はどうしても嫌いになれなかった。

優越感?ちょっと違う。
彼女は私が持っていないものを確かに持っている。
そして、彼は私がそれを持っていないことを知っている。



彼女のことが好きなのにうまく思いが伝わらなくて、彼女を忘れようとして私を振り回した彼のことを、
私は不思議と嫌いにはなれなかった。
ひどいことをされたのはわかっているのに・・・謝られても、私にはただ泣くことしかできなかった。

 

いつものふてぶてしい彼からは想像できない。
謝りながら私の頭を優しく撫でる彼の声は、好きな彼女に対する諦めが少し入り混じったような、そんな調子だった。

 

 

―――『好きだったのに・・・ひどいよ・・・』

―――『・・・・ごめん』

 

 

 

 

――――友情を手に入れる代わりに、私は恋を失った。でも後悔はしていない。

 

私に必要なのは、嘘と笑顔の仮面だけ。
胸に開いた穴を埋めるには、もうちょっと時間がいるかもしれないけど・・・。

 

 

だからそれまで、
ワガママで元気な私のままでいれるように
、嘘をつかせて。

 






 

fin.













滋の一人語りです。失恋したばかりの滋ちゃんの直後の気持ち。暗い内容ですが、別に私にいやなことがあったというわけではありません(笑)
天真爛漫という言葉がぴったりな嫌味のないキャラクターですよね。つくしの次に女性キャラでは好きです。(2005/02
/14)


*Back