うそつき
今日、一つ嘘をついた。 それは誰よりも好きな人を幸せにする嘘で、自分を不幸にする嘘。
諦めた、なんてウソ。 でも幸せになって欲しいのは本当。
お金持ちの一人娘でワガママばかり言って周りを困らせてきた私が、唯一ついた嘘。 ・・・昔何かの本に書いてあった。 『人間は切望しているものほど、手に入りにくいものだ』って。本当にその通りだと思う。
たくさん泣いた。時々思い出すと、胸が痛む時だってある。 それでも好きな人には幸せになって欲しいなんて、自分にこんな気持ちがあるとは思わなかった。
―――『私は平気』なんて、口に出して言ってみたところで、全然平気じゃないくせに・・・・・・。
本気で人を好きになることがこんなに苦しいなんて、初めて気付いた。
目を閉じて浮かぶのは、大好きな彼と、彼が好きな彼女。
もう少し出会うのが早かったら結末も違うものになっていたかもしれない、なんて考えてしまう。 優越感?ちょっと違う。
いつものふてぶてしい彼からは想像できない。
―――『好きだったのに・・・ひどいよ・・・』 ―――『・・・・ごめん』
――――友情を手に入れる代わりに、私は恋を失った。でも後悔はしていない。
私に必要なのは、嘘と笑顔の仮面だけ。
だからそれまで、
fin. |
滋の一人語りです。失恋したばかりの滋ちゃんの直後の気持ち。暗い内容ですが、別に私にいやなことがあったというわけではありません(笑) |