やっと手に入れた。一番欲しくて手に入らなかったもの――――――。
体温
〜冷めない熱〜
ずっと探していた。自分の冷めた心を温めてくれる『誰か』。
『愛してる』なんて言葉、死ぬまで言うことなんてないだろうと思っていた。
ましてや、こんなに人を好きになるなんて――――。
細い身体で精一杯、俺を抱き締め返してくれるあいつ。
こんなに小さな身体で戦っていたのだと、今更ながらに気付く。
さりげなく付けた独占欲の印をそっと撫でると、彼女は俺のものだと実感が沸いた。
途切れ途切れにこぼれる彼女の小さな声を、俺はもっと聞きたくて雨のように彼女にキスを降らせる。
行き場を探すように、彼女の冷たい手が俺の背中に回された。
愛してる。
愛してる。
愛してる。
何度言っても足りないけれど、それしか頭に浮かばなかった。
耳元で囁く度に小さく頷く彼女にまたキスをしようとした時、彼女の体温がいやに高いことに気がついた。
彼女は大丈夫だと強がっていたけれど、
・・・俺だって本当はNYへ行く前に抱いておきたかったけれど・・・
それよりも彼女を大切にしたくて―――
「だめ、やっぱり涙でちゃうよ。」
腕の中で声を抑えて泣く彼女の身体を、俺はただ抱き締めることしか出来なかった。
そして同時に、何も着けない彼女の裸の心を初めて見た気がした。
抱き締めたところから直接伝わる体温が、俺に一人じゃないんだと安心感を与えてくれる。
こぼれる涙を唇で掬い取ると、彼女が赤い目で少し笑ってくれた。
「・・・やっぱり、道明寺っていい男だね。」
「今更・・・おせーよ。・・・さぁ、早く寝ろ。お前が寝るまでずっとそばにいるから。」
「・・・ありがと。」
ホッとしたのか、すぐうとうとと眠り始めた彼女を俺はしばらく眺めていた。
胸の中には彼女のぬくもりが残っている。
体温だけじゃない、この冷めない熱はたとえ離れても消え去ることはないだろう。
明日、目を覚ます彼女のそばに俺はいない。
だけど、これは別れじゃない。
4年後、彼女の元へ帰って来るために。
俺は心の中でつぶやくと、眠っている彼女の左手を取り薬指に誓いのキスをした。
fin.
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