宣戦布告
〜あたしと彼と冷めない熱〜
「何、笑ってんだよ。」
「ちょっとね・・・思い出しちゃって。昔のこと。」
隣に座っている彼が、写真を見て笑っているあたしを怪訝な顔で見ている。
あたしはゆっくりと立ち上がって彼の正面に立ち、彼を指差して言った。
「『宣戦布告よっ』・・・って覚えてる?」
一瞬、ぽかんとあたしを見た彼だったが、ニヤリと笑うとあたしを引き寄せた。
「・・・売られた喧嘩は買わなきゃな。」
「ちょ、ちょっと・・・そんなつもりじゃ・・・」
抗議も空しく、あたしの言葉はあっけなく彼の唇に遮られてしまう。
ようやく呼吸が出来た頃、あたしはすっぽり彼に包まれていた。
「ね、ねぇ!これ一緒に見ない?」
彼のぬくもりを背中で感じながら、あたしはアルバムを開く。
みんなでパーティーをしたところや、写真が嫌いな彼を掴まえて2人でいるところを撮られたり。
どれも大切な思い出がつまった写真だ。
「何だこれ、頭だけ・・・」
「ああ、それね。ほら、あんたがNYに行く前、時間がある時に家に来て、一緒に写真撮ろうとしたじゃない?」
「そんなことあったっけ・・・」
「あと残り一枚だったのに、うまく写せなくて失敗しちゃったけど・・・」
一時の妨害が嘘みたいになくて、時間があれば会いに来てくれていた彼。
あの時のキスを思い出して、あたしは思わず赤面してしまった。
「何、赤くなってんだよ。・・・スケベ。」
あたしの様子に赤面が伝染ったのか、後ろを見ると彼も顔を少し赤らめている。
「〜〜誰がよっ!」
「・・・よかったらその時の続きを今からやってもいいけど?」
そう言って、彼は後ろから抱き締める力を強くした。
耳元で囁かれた言葉に、あたしの心はぐらぐらと揺れ始める。
「ダメ。」
あたしは拒絶の言葉で必死で心のバランスを保とうとした。
「・・・ダメと言われたら、男っていうのはますます・・・」
「こ、こらっ、西門さんじゃあるまいし・・・。」
あたしのささやかな抵抗は簡単に彼の腕によって封じ込められ、首筋に赤い印をつけられてしまった。
「俺のもの。」
不敵に笑う彼に、あたしは真っ赤な顔でまた憎まれ口を叩いてしまう。
「あんたのものじゃないっ! あたしはあたしのものなのっ!!」
「・・・他の男のでなけりゃ、いいよ。」
恥ずかしげもなく臭いセリフを吐く彼に、これだからあたしはいつも負けを認めることになるのだ。
全く純粋というか、馬鹿というか・・・。
彼の腕を解かずに、あたしはくるっと身体を反転させると彼と向き合う。
「・・・何だよ?」
「・・・あたししかあんたを幸せにしてあげられないんだからね。」
赤くなった顔を見られないように、そう言ってうつむいたあたしを彼は強引に上に向かせると優しいキスをくれた。
子供みたいに無邪気な笑顔で、嬉しそうにあたしを抱き締める。
そして再び言葉の代わりにあたしに降り注がれるキスの嵐。
・・・息も絶え絶えのあたしの口撃を軽くかわしながら、彼はあたしに降参させるべく戦いを挑み始めた。
白いシーツの上で繰り広げられた戦いの結末は、冷めない2人の熱だけが知っている。
fin.
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