Girl meets boys.
〜みつあみの理由と彼女の憂鬱〜
娘の玉の輿を狙う母親の勧めで、良家の子女が通う英徳学園に入学したあたし。
塾にも行かず猛勉強して合格した時には、嬉しくないわけではなかったけれど・・・。
お金持ちだって誰か友達になれる人はいるでしょ、という甘い期待は学校生活が始まるとすっかりなくなってしまった。
ましてや、恋なんて。
卒業するまであと1年と11ヶ月と4日。ただ無事に過ごせたらいい。
だからひたすら地味に、と毎日鏡の前でみつあみを編む。
―――今日も無事、一日が早く過ぎますように。
そんな願いを指先に込めながら、残りの日を数えていたある日、それは起こった。
『えらっそーにねりあるいてるけど結局父親の庇護の下じゃない。
自分で金も稼いだことないくせにたいそうなこと言うんじゃないっ!』
まさか学園のリーダーに喧嘩を売るなんて。
ただ無事に3年間を過ごせたらいいって思ってたのに、自分でそれを壊してしまった。
――――そして嵐の中へ。
泣いたり怒ったり笑ったり、あたしの周りはいつも忙しく変化して、
気が付けばいつの間にか恋をしていることに気付いた。
ファーストキスは不慮の事故で落として(暗闇だったし)。
セカンドキスは雰囲気に流されてしまった(あの状況なら誰だってしょうがないと思いたい)。
そして3回めの正直。あたしが高校生活で初めて好きになった人とのキス。
彼の本当の気持ちを知って嬉しかった。でもそれは成就することのない恋だった。
あたしの望んでいた恋は、お互いが穏やかに空気みたいにそばにいる、そんな優しい恋。
だけど現実はジェットコースターみたいだった。
追いかけられて、追いかけて、やっと向き合うことが出来たと思った頃にまた新たな問題。
慌ただしかった生活の中で、あの頃が実は一番輝いていたんじゃないかと思う。
・・・もう二度と、経験したいと思わないことばかりだけど。
でもF4と出会ったあの時、言いたいことを抑えていたらきっと何も起きなかったに違いない。
あたしはただ、らしくないまま高校生活を送っていただろう。
そして、卒業まであと5日。
あれから伸ばしている髪を時々鏡の前でみつあみにするたび、昔のあたしを思い出す。
相変わらず学校は楽しくないけど、あたしを支えてくれる友達が出来た。
毎日を祈るような気持ちで過ごしていたあの頃に比べたら、いい顔で笑えるようになったと思う。
遠くにいる恋人を想うと、会いたくて泣きたくなる時もあるけれど・・・・・・。
「がんばれ、あたし。」
鏡に向かってつぶやくと、写真の中でしかめ面をしているあいつが少しだけ笑った気がした。
fin.
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